抗告人と相手方は、平成26年2月に結婚、同年4月、Aを出産、嫡出子とする出生の届け出をした。令和元年10月、相手方は抗告人に対して離婚を求め別居。以後相手方がAを監護養育している。抗告人は同年11月Aが自分の子であるか疑問を持ちDNA検査を実施したところ、生物学上の父ではないとする結果を得た。
相手方はこの結果を否定せず、父親が抗告人以外の可能性もあることを感じていたが、抗告人には伝えていなかった。抗告人は令和3年3月、親子関係不存在確認調停の申立てをして、離婚を求め夫婦関係調整調停の申立てをした。その後、相手方は前述調停に出席せず不成立、また後述調停手続きでも離婚には応じず、不成立で終了した。一方相手方は婚姻費用分担調停の申立てをして、これも不成立となり、審判に移行した。
原々審は事実関係に照らすと相手方は信義則に反するとして申立てを却下。相手方は即時抗告した。原審は、父子関係の不存在の判決確定等までの間、養育費月額4万円の支払いを命じた。
最高裁判所は、原審は裁判所が審理判断できるにもかかわらず、本件父子関係の存否を審理判断することなく抗告人の扶養義務を認めたものであり、法令解釈適用を誤った違法がある、として原々審判に対する抗告を棄却すべきとした。
■参考:最高裁判所|婚姻費用分担審判において、推定を受けない嫡出子との間の父子関係の存否を審理判断することなく、夫の扶養義務を認めた原審の判断に違法があるとされた事例(令和5年5月17日・第二小法廷)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92090