古来より、「遠くを謀る者は富み、近くを謀る者は貧す」と言われる。つまり、目先の利益のみを追ってはいけないという事だ。
某商店街のX鮮魚店から、こんな相談を受けた。X店は当該商店街の中で最も活気があり、長年近隣の顧客から人気があった。「店が清潔で、活きの良い魚が買える」、と。 ところが、ある時を境に、顧客が徐々に減少してしまった。魚のランクや価格、接客法は変えていない。そこで、店舗を観察したが、店内の清掃と整理整頓が不充分である事に気づいた。店主によると、最近まで70歳代の母親が全て店内清掃をしていたが、腰痛が悪化して手伝いが出来なくなったと言う。店主も仕事に追われて、清掃が行き届かなくなった。店売りが落ちて目先の利益獲得に焦り、弁当の注文を受けたりした為忙しくなり、店内の清掃を怠ったという。
店主は反省を込めて、「目先の利益や日常の雑用に追われて、商売の本質を忘れお客様の期待に応えていませんでした」と。さらに、「商売は山の植林のように、木を切って売る前に苗木を植えたり、毎日伐採作業をしたりする事と同じですね」と話した。「お客様は、魚の鮮度や価格だけを見て来店している訳ではない。店主がどんな意気込みでお客様を迎える準備をしているかを真剣に見ている」と、気づいた。