X病院では、看護師等の労働意欲や接遇態度に多くの課題を抱えていた。そこで、外部から経験豊富な人材3名をスカウトして、一気呵成に職場改善を図る事にした。
ところが、職場改善どころか新入職員が指導側になった為か、元々在籍していた看護師等が反発したり、辞めたりした。「職員の心構えを徹底的に改革して、ぜひ一流の職場にして下さい」(X病院長)という要請をそのまま受け止めてしまったからだ。
人材養成や職場改善策に限らず、物事の改革には程良い対応策がある(中国古来の儒学には、行動と感情に偏りのない「中」と「和」を重んじる中庸の徳というものがあり、書物として『中庸』がある)。能力格差のある同僚が一緒に働くような職場では、職務能力が下位の者を上位の者と同じレベルに引上げる改善策は急には進展しない。学校とは違い、知識よりも行動が中心だ。
では、改善の手順やその厳しさは、どのような方針で進めるべきか。簡単に言えば、「手加減しつつ、慎み深く確実に進める事」である。具体的に言えば、「上に立って指導する者が相手の位置に下りて行って、一緒に上がって来る支援をする事」である。職場改善は、目標とする職場全体のレベルを関係者全員が理解して、段階を踏みつつ一歩ずつ進める事が重要である。