30年度税制改正で抜本的な拡充が図られ、本年1月以後の贈与・相続から適用されている事業承継税制であるが、同税制は29年度改正でも災害時等の雇用要件の緩和や小規模事業者に配慮した雇用要件の見直し、贈与税の納税猶予と相続時精算課税制度を併用可とするなど使い勝手の向上が図られた。
ただし経済産業省によれば、29年の贈与税の納税猶予の認定適用の前提となる認定は139件と、前年の6割程度の水準に落ち込んだ。29年度改正の成果がでなかったことになる。これは昨年9月ごろから30年度の改正で事業承継税制が抜本的に拡充されるとの見方が強まり、その情報により利用が手控えられた結果、この大幅減につながった可能性がある。
29年12月31日以前に贈与・相続により株式を取得した場合、30年度の改正で創設された特例の認定を受ける、あるいはそれ以前からの認定から特例の認定に切り替えることはできないため、過去の認定分は承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要なほか、総株式数の3分の2までしか対象とならない。ただ、先代経営者以外の株主(その配偶者等)からの贈与・相続については、認定後5年間の有効期間内に申告期限が到来するものに限り、追加で認定を受けることができる。