歴史小説等には、大名や旗本の家等を存続させる為に、縁者から養子を迎える場面がよくある。武家に限らず、商人や農民も家を存続させる養子制度を活用した。現代でも子の無い経営者等が養子縁組によって事業承継を図ったり、娘の夫を後継者にしたりすることがある。
X社(印刷業、株はA社長が65%、B専務が35%所有)のA・B兄弟は共同創業者として30年間比較的良い業績を積んできたが、Aは子が無かったので親戚の子C(当時大学生)を養子とした。Cの大卒後、AはCを自社に入れようとしたが、Bが反対したので中学の教員になった。Bの息子はX社に入って、現在幹部社員になっている。その後、Aが5年後の引退を表明すると、C(36歳)は教員を辞めてX社に入社した(1年後に取締役)。AはCを後継者に考えているが、経験不足を理由に(本音はCが養子であること)Bは反対である。BがAの持株を一部買取ることを申し出たがAは断った。一般に親族承継は親族外承継(中小企業全体の4割程)より容易と言われる。しかし、後継者さえいれば安泰というわけではなく、早めの計画を策定して、関係者の了解を得ながら承継を進めることが大切である。X社のようなケースでは、将来C社長の就任を巡って紛糾する恐れが大きい。