不動産貸付業を営む請求人が、賃貸物件の賃借人から受け取った敷金を返還した事実が認められないことなどから、敷金相当額を請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入できるのかどうかが争点となった事案で、国税不服審判所は27年11月4日付で、算入すべしとの原処分庁の主張を排斥、平成22年分~24年分の所得税の過少申告加算税の各賦課決定処分、22年分の所得税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも棄却、23年分~24年分の所得税の各更正処分および過少申告加算税の各賦課決定処分を一部取り消した。
審判所は、賃借人は賃貸物件の賃料を滞納して請求人から明け渡しなどを求められ、▽賃貸借契約の合意解除▽物件の明け渡し▽明け渡し後の残置動産の処分に異議を申し立てない―等主な内容とし、他に何らの債権債務がないことを相互に確認する旨の清算条項が付された和解に応じ、請求人の賃借人に対する敷金返還債務は存在しないことが確認されていると認定。和解内容を考慮すると、敷金は実質的にはすべて賃借人が負担すべき賃料、賃料相当損害金、その他賃借人が負担すべき費用に充てられたものと認められ、請求人に経済的利益はないから、総収入金額に算入すべきとはいえないと裁決した。
■参考:国税不服審判所|敷金相当額の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきか(平成28年11月4日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0303020000.html#a101