再生手続き開始の決定を受けた上告人が、被上告人との間で基本契約を締結して行っていた通貨オプション取引等が20年9月15日に終了したとして、基本契約に基づき清算金11億円余と約定遅延損害金の支払いを求める事案で最高裁第二小法廷は、原告の請求を棄却した原判決を破棄するとともに、上告人の請求を一定の限度で認容し、その余は棄却する旨判決した。
被上告人は再生手続き開始の決定後、自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が上告人に対して有する債権(再生債権)を自働債権とし、上告人が被上告人に対して有する清算金の支払い請求権を受働債権として基本契約に基づく相殺をしたことにより、清算金の支払い請求権は消滅したなどと主張。これが民事再生法92条1項により行うことができる相殺に該当するかどうかが争点となった。原審は、相殺が許容され、清算金債権は全額が消滅したと認定。
最高裁はこの判断を覆し、再生債務者に対して債務を負担する者が当該債務に係る債権を受働債権とし、自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は、合意があらかじめされていた場合でも、92条1項によりすることができる相殺に該当しないものと解するのが相当だと説示した。
■参考:最高裁判所|清算金請求事件(平成28年7月8日・第二小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85999