14年前の福島第一原発事故をめぐり、最高裁判所は、上告を棄却、上告理由が刑事訴訟法第405条に該当しないと判断した。
裁判の背景として、平成14年10月から東京電力の代表取締役社長、会長として従事した丙、および副社長の甲と乙が、福島第一原子力発電所の運転と安全保全業務において業務上の注意義務を怠ったとされた。具体的には、10メートルを超える津波が発電所を襲うことを予見しながらも防護措置を講じなかったため、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う津波で福島第一原子力発電所が被災し、多数の死傷者を出したというもの。第1審判決では、津波の予見可能性が合理的な疑いを超えて認定できず、被告人たちは無罪とされた。指定弁護士が控訴したものの、第2審判決でも第1審判決が支持された。
最高裁は、被告人たちが津波の予見可能性を十分に認識していたとは認められないとし、防潮堤設置などの具体的な対策を講じる義務もなかったと判断。また、長期評価や津波評価技術に基づく予測が、現実的な可能性を認識させるものではなかったとし、東京電力の役員たちに対する業務上過失致死傷罪の成立に必要な予見可能性が認められないとした。
■参考:最高裁判所| 津波による原子力発電所の事故につきこれを設置し運転していた電力会社の役員らに業務上過失致死傷罪が成立しないとした事例(令和7年3月5日・第ニ小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93864