Weeklyコラム 一計を案じる

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こんな経験があるだろうか。「百計も尽きたときに、苦悩の果てが一計を生む。人生、いつの場合も同じである。」

これは昔、吉川英治が著した有名な『三国志』に出て来る言葉で(『三国志(六)』講談社発行)、筆者も大変共感している。土木工事業を営んでいたA氏は、12年程前に商売が行き詰まり、家族の生活費が全くないような状態になってしまった。一番の悩みは、銀行や取引先への返済不能よりも、友人や親戚に頼んだ保証人の事だった。謝罪に行ってなじられる事には耐えたが、今後の交際を断られる事が一番辛かった。

そんなある時、親戚の一人から「Aさんが以前相続した山(財産価値はほとんどないが、20ヘクタールある)を活用出来ないか」と言われた。これまで無価値と思っていた山林であるが、周囲に観光地が多い事から、友人の助言により野外活動場(キャンプ場や民宿等)として開墾した。最初は将来ビジョンなどなかったが、10年で10人の従業員を雇う事業所になった。

A氏の立ち直りは、どんな試練にも自暴自棄にならずに一計を案じた事であろう。A氏は現在、友人や親戚の人を世話する事を生きがいにしている。自分だけの力には限界があるが、信頼する他人の知恵や助言により行動すれば物事は必ず解決する。