上告人(株式会社)が監査役だった被上告人に対し、被上告人が任務を怠ったことにより従業員による継続的な横領の発覚が遅れて損害が生じたと主張、
会社法423条1項に基づき損害賠償を請求する事案で最高裁第二小法廷は、被上告人は任務を怠っていないとして上告人の請求を棄却した原判決を破棄、東京高裁に差し戻した。
上告人は公開会社ではない株式会社で、会計監査人を置かない。被上告人は、監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役(会計限定監査役)。長期にわたり各期に上告人の計算書類と附属明細書の監査を実施したが、横領の発覚を恐れた経理担当従業員から提出された残高証明書の偽造に気づかずに会計帳簿とを照合、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認。各期の監査報告で適正に表示している旨意見表明した。
会計限定監査役の主たる任務について原審は、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認すれば足りると判断したのに対し、最高裁は、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常に任務を尽くしたといえないと説示した。
■参考:最高裁判所|会計限定監査役は,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない(令和3年7月19日・第二小法廷・破棄差戻)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90486