店舗等の苦情処理の現場は、複雑な人間心理の葛藤が渦巻く。店舗側に不正や落ち度が無い自信があれば、担当者は動揺無く処理出来る。しかし、店舗側の落ち度を承知であれば、言い訳に慌てるであろう。
一番の問題は、日頃何となく行っている不正(お客は知らないと思っている)で、苦情が来る事を心配していない場合である。X惣菜店は、創業時から国産の肉・野菜100%を売り物にしているが、現在は後継者が輸入物を使い始めている。これまで苦情が全く無く、商品の評判は良かった。
ところがある時、「この鳥の唐揚げの肉は日本産ですか」(お客は疑っていた)という問合わせが何件もあった。事情を知っていた従業員は自信をもって回答出来ず、その日を境に客数が激減してしまった。
中国の古文(『易経』岩波文庫等参照)に、「小さな善行はやってもムダと考えてやらない。小さな悪事はやっても問題無いと考えて止めない。やがて悪事が積重なって露呈する」とある。苦情処理は、日頃からその解決方法を理解しておくことが大切である。しかし、不正を承知していれば、真実を伝えてお客の許しを求めても無理である。前述の古文の言葉では、「積善の家余慶(よけい=思わぬ幸い)あり、不積善の家余殃(よおう=思わぬ不幸)あり」としている。