Weeklyコラム 人材の登用はいつか

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「今が有能な人材を登用するチャンスではないですか」これは、相談に乗っているX社(自動車部品製造業)の常務(後継者)からの提案である。コロナ禍により、これまでは順調な経営を継続してきたX社の業績も厳しい。業績が下降して初めて気づいたが、身近に頼りになる人材がいない事だった。最近、親しい同業経営者から「有能な技術者が、ある事情があって職を探しているのだが・・」という相談を受けた。

これまでも景況が厳しい状況になると、X社のように考える企業はかなり多かった。業績が下がると有能な人材を採用したり、社員の意向(意見や批判等)を気にしたりする。世間の雇用情勢が採用側優勢と考える為か、人材登用のチャンスと捉える。経験に学んだ一般論だが、経営者は運営が厳しくなると、新しい人材を登用したり、部下の意見や諫言に耳を傾けたりする。しかし、経営が順調な時は、あまり真剣にならない経営者が多いようだ。易理論には、「君子は安きに居て危うきを忘れず」とある(高田真治・後藤基巳訳『易経(下)・周易繋辞下伝』岩波文庫等参照)。

筆者は、今のところX社の人材登用(幹部社員)はコロナ禍が落ち着いてから検討・実施し、むしろ安泰になった時こそ、人材登用を確実に実施すべきと回答した。