「喉元(のどもと)過ぎれば熱さ忘れる」と言うが、過去にどんなつらい事があっても過ぎてしまえば、大抵の人々は忘れてしまうものかもしれない。関東の中核都市にあるX商店街(約50店)は、30年程前から賑わい感がなくなり、後継者のいる店舗が少なくて店舗数が半減してしまった。
ところが、商店街の奥にある有名な神社仏閣や歴史的な建物等が外国人観光客や周辺市町村の住民から注目されて、商店街に賑わい感が戻って来た。商圏が飛躍的に拡大し、飲食店や雑貨店が多い商店街であった為か売上も上昇した。廃業や転業を考えていた店主は、思わぬ繁盛に驚いている。
このような状況に、店主の反応は大きく分けて二通りあり、過去の苦しさを忘れて積極的な設備投資(改装等)をする者と、苦しかった時の事が忘れられず積極的な対応策が取れない者がいる。後者は、外国人観光客等による賑わいは、長続きするものではなく一時的な現象かもしれないと懸念する。果たして、状況が変われば過去の苦しい経験を忘れて時流に乗る事が得策か、それとも過去の苦しみを教訓に慎重な対応が得策か、現実は大変難しい選択である。選択はバランスが大事だが、状況が良い方向に変化した場合は、一般に時流に乗る事が変革のチャンスではなかろうか。