すべて物事には終始があり、昔の人は人生の良い締め括りを、「終わりあり」「有終の美を飾る」等と表現した。事業者や政治家がどんな立派な業績を残しても、最後のところで失態すれば、その功績が失われてしまう。輝かしい人生を築いた人ほど、終わりを全うするかどうかが重要である。
今、中小企業の事業承継が盛んであり、選択と決定に悩む経営者が多数いる。従来は経営者の子等の承継が中心であったが、近年は親族以外の社員が承継したり、取引先等が買収したりする事も増えている。小規模事業は、承継されずに完全廃業する割合が大きくなっている。
平成18年頃、X社(電気工事業、社員50人)は、A社長が60歳代となり、息子(常務、30歳)を次期社長とする会議を開いた。ところが、社長の弟(専務)が、常務の経験年数や社員・取引先からの信頼度不足等を理由に反対した。A社長も非常に迷ったが、結局専務が推薦する経験豊富な取締役総務部長を一時的に昇格させ(在任5~10年の予定)、息子は専務としてさらに修業を積むことにした。この人事が非常に幸いし、X社は主要取引先の倒産等を無事に乗り切る事が出来た。現在は息子が社長を勤め、会社の業績は安定している。A社長の決定が、有終の美を飾れるか否かの境となった。