無着成恭編集『山びこ学校』(岩波文庫)によると、1950年頃の農村は全世帯の90%程が農林業であったそうだ(山形県山元村の場合)。当時はまだ配給制度が残っており、子供たちも家計を助ける為にお手伝いをしていた。山で自らワラビを採って売りに行ったり、家の農作業を手伝ったりした。ある作文の結末に、「来年は、もっともっと学校など休んで、かせがねばと今から思っています」とあるのが印象的だ。
現在、各地の商工会や市町村等主催で、子供たち(大抵は小学生)による「模擬創業」が実施されている。具体的に商品を仕入れ(手法は様々であるが)、広告・接客・販売・マネジメント活動をして、一種の創業体験をさせるものである。数十年前、農家の子供たちの多くが、家で採れたキュウリやナス等を近所の家へ売りに行ったものだ。普通100円程の売上であったが、商売の感覚を味わう事が出来た。具体的には、どんな野菜が良く売れるのか、値段はいくらにするのか、売れたらお礼を何んと言うのか、等を自然に考えるようになった。
今、60~70歳代以上の事業者の中には以上と同じような経験者が多いと思う。農業に限らず、子供時代に農業や商業を通じて販売や生産等に関わる事は、将来の創業意欲を醸成すると考える。