以前、「商店街の幸(さいわ)い」と言う文句を作ったことがある。すなわち、「お客様が近くに住んでいる」「商売仲間がたくさんいる」「近所の人から頼りにされる」「家族が皆で働ける」「転勤、定年が無い」である。
ところが、近年はこの幸いがいずれも怪しくなった商店街が増えている。例えば、お客様が近くに住んでいても車で遠くの大型店へ行ってしまったり、商売仲間の多くが廃業したり、家族のうち息子夫婦が会社勤めになったりして、店主老夫婦だけで店の運営をしている。商店街の幸いは昭和30年代頃が絶頂期と言われる。衣料品店や雑貨店であれば、馴染みの卸商が定期的に来て、居ながらにして商品を運んでくる。その商品に適正利益を上乗せして陳列していれば、特別な工夫はしなくても顔見知りの人々が買ってくれた。しかし、近年の消費者の多くは、土日に車で大型店へ行ってまとめ買いをし、不足分のみ近くの商店街(大型チェーン店が多い)で購入する。近所の人々からあまり頼りにされていない。
今後は、各個店が自己責任で独自の魅力づくりをする他はない。自店の主要顧客を捉え、お客様の求める商品を揃えて独自の接客が工夫出来るかどうかに掛かっている。魅力ある個店が街区内に増えて行くことが商店街の生きる道であろう。