相手方が抗告人(夫)に対し、両名の長男の引き渡しを命ずる審判を債務名義として間接強制の申し立てをした事案で最高裁第三小法廷は、抗告人に対し長男を相手方に引き渡すよう命ずるとともに、履行しない時は1日につき1万円の割合による金員を相手方に支払うよう命ずる間接強制決定をすべきだとした原決定を破棄、原々決定を取り消した。
最高裁は過去の経過を振り返り、その上で、審判を債務名義とする間接強制決定により抗告人に対して金銭の支払いを命じて心理的に圧迫することによって長男の引き渡しを強制することは、過酷な執行として許されないと説示。このような決定を求める本件申し立ては権利の乱用に当たると断じた。
相手方と抗告人は婚姻により2男1女をもうけたあと別居。当初、抗告人が3人全員を連れて実家に戻った。3人の監護者をめぐり裁判沙汰となり、審判を債務名義とする引き渡し執行の際、二男と長女が相手方に引き渡された。長男(当時9歳3カ月)は引き渡されることを拒絶して呼吸困難に陥りそうになったため執行不能とされた。人身保護請求事件の審問期日に長男は引き渡されることを拒絶する意思を明確に表示、人身保護請求は、長男が自由意思に基づいて抗告人等のもとにとどまっているとして棄却された。
■参考:最高裁判所|間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件(平成31年4月26日・第三小法廷・破棄自判)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88646