3人の共同相続人が、うち1人の名義の口座に入金された資金及び上場株式の購入資金に相当する預け金返還請求権は、被相続人の相続財産であるとする相続税の更正処分等に対し、取消しを求めた。争点は、上記の預け金返還請求権があるか否か。
被相続人はM社の代表取締役で、長男である請求人Dも取締役の1人であった。設立の前、Dの名義でS社の株式3000株が約497万円(ア)で購入され、それ以降の5年間にD名義の口座に計約5020万円(イ)が入金された。原処分庁は、提出された申告書と遺産分割協議書に含まれていない、(ア)及び(イ)の計に相当する額の預け金返還請求権等は相続財産であり未分割財産であるとして、更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。
審判所は、Dの口座は一定の期間、実質的に被相続人が管理し、上場株式の購入等の運用も行っており、運用から生じた化体財産は被相続人に帰属していたと判断。しかしその後、Dの自宅の建築資金として700万円が贈与され、化体財産の一部も建築資金に充てられたこと、18年以降はD自身で口座を管理していたこと等から、当該化体財産の帰属はDに移転したとみるのが相当とし、預け金返還請求権は発生しておらず、原処分を取り消すべきとした。
■参考:国税不服審判所|相続人名義預金に入金された資金の購入資金の運用から生じた化体財産は、預け金返還請求権として相続財産には当たらないとした事例(全部取消し・平成30年8月22日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0308000000.html#a112