被上告人が上告人に対し、上告人が被上告人の妻であったAと不貞行為に及び、これにより離婚をやむなくされ、精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき離婚に伴う慰謝料等の支払いを求める事案で最高裁第三小法廷は原判決を破棄し、第1審判決中、上告人敗訴部分を取り消すとともに、前項の部分につき被上告人の請求を棄却した。
原審は、上告人とAの不貞行為により被上告人とAの婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから、上告人は両者を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、被上告人は上告人に対し、離婚に伴う慰謝料を請求できるとした。
最高裁は、夫婦の一方は他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当だとした上で、▽本件の事実関係等によれば、上告人は被上告人の妻であったAと不貞行為に及んだが、発覚したころにAとの不貞関係は解消されており、離婚成立までの間に特段の事情があったことはうかがわれない▽したがって、被上告人は上告人に対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができないというべきだ―と説示。その上で、被上告人の請求は理由がないとして、同部分につき被上告人の請求を棄却すべきとした。
■参考:最高裁判所|損害賠償請求事件(平成31年2月19日・第三小法廷・破棄)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88422