Weeklyコラム 観光と交通の便

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研修の仕事で温泉とスキー場のある町へ行った時のことである。仕事の後、地元商店主や商工会職員と懇親会をした。「高速道路が通り、近くにインターができて便利になりましたね」と言ったところ、出席者が暗い表情をしている。「他所から速く来られるということは、この辺の人も他所へ簡単に出られるということ」「以前は首都圏から大勢泊りがけでスキーに来たが、今は日帰り客が多い。みやげ物もあまり買わない」、等と次々に嘆くのである。

首都圏の他の観光地においても、似た現象がみられる。高速道路や鉄道網等が整備されると観光者や来街者が増えるが、必ずしも経済にブラスになるとは限らない。従来は泊ってゆったり観光していた人々が日帰り客になり、事業者は温泉宿の従業員を減らしたり、飲食店やみやげ店を廃業したりする。また、観光で高速道路や新幹線を利用する者は、その時の目的地以外にあまり関心を持たないので、同じルート上の市町村に昔の宿場町のような連続性はない。

観光の発展にも、交通条件の向上は重要である。しかし、観光資源や商業環境を充実させなければ、滞在型の観光客が減ったり、地元消費者が他所に流出したりする。交通の便が良くなれば地域間競争が激しくなり、観光資源の差別化等が大切になる。