Weeklyコラム 見習い中

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時々行く飲食店には、「只今見習い中」という名札を付けた店員が、いつも数人いる。長い人は数年間付けているようだ。彼らは接客動作が早く、先輩や店主が呼ぶと大きな声で返事をして、指示通りに動く。最近の新入社員の多くは「研修中」という名札を付けているが、一般的に3ヶ月程の試用期間が終わると自動的に外してしまう。本人も研修中という名札を外すと見習い期間が終わったと思い、先輩から学ぶ姿勢が消えてしまう人もいる。同時に、先輩の方も後輩の教育が終わったと思い、後輩の欠点に関心を持たなく場合がある。

「能」の秘伝書『風姿花伝』(世阿弥著、野上豊一郎・西尾実校訂、岩波文庫)に、「上手にもわろき所あり。下手にも、よき所必ずあるものなり。これを見る人もなし。主も知らず。上手は、名を頼み、達者に隠されて、わろき所を知らず。」とある。見習い中の人が先輩の技術や接客法等を学ぶ事は当然ながら、先輩が慢心してしまう事は一層問題である。仕事上大きなミスをする人は、見習い中の者よりも先輩の方が可能性は高い。見習い中の人を見守る姿勢は、先輩の成長を促す効果があると考える。

因みに、前掲の『風姿花伝』は、「上手は下手の手本、下手は上手の手本なりと工夫すべし。」と結んでいる。