妻(原告)がA社の代表取締役だった夫の有していたA社株を相続した際の相続税の申告について行われた所轄税務署の更正処分に対し、原告が取消しを求めた事案で、東京地裁は税務署側の主張を棄却した。
相続時にA社は当時の評基通178の「大会社」に、A社株は同168(3)「取引相場のない株式」に該当。夫はA社株の8%を有しており、妻が1.74%、その他親族が5.17%で計14.91%であった。他に、株主がすべてA社の役員及び従業員であるB社が7.88%、夫の親族が株式の32.6%を有するC社が24.18%、個人株主が3.84%のA社株を保有。B社とC社の本店所在地はA社と同様だった。原告は配当還元方式を用いA社株を1株75円としたが、税務署は類似業種比準方式により2292円と評価。争点は、同株式が評基通188の取引相場のない株式の区分「同族株主以外の株主等が取得した株式」に当たるか否か。
税務署は、法人税法施行令4条6項をもとにB社とC社が有するA社の議決権をA社自身又は原告が有するとみなしたが、同地裁は、議決権判定そのものに6項は適用されないとし、原告と親族の有する議決権は計15%未満であるから、同通達188(3)により配当還元方式で評価すべきと判断した。