厚生年金保険法(改正前)附則8条の規定による老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)について、同法43条3項の規定による年金の額の改定(退職改定)がされるためには、同項所定の期間を経過した時点において当該年金の受給権者であることの要否が争点となった事案で最高裁第二小法廷は、不要として被上告人が主張する支給決定取り消し請求を認容すべきだとした原判決を破棄、第1審判決を取り消すとともに、被上告人の請求を棄却した。
被上告人は厚生労働大臣から同年金について、同規定による年金の額の改定がされないことを前提とする支給決定を受けたことから、退職改定されるべきであり、同決定は違法と主張、その取り消しを求めた。原審は退職改定の要件として、資格喪失日から起算して1月を経過した時点において退職改定の対象となる年金の受給権者であることを求めないと解するのが相当だとし、本件処分を違法と判決した。
最高裁は、特別支給の老齢厚生年金について退職改定がされるためには、被保険者である当該年金の受給権者が、その被保険者の資格を喪失し、かつ被保険者となることなくして待期期間を経過した時点においても当該年金の受給権者であることを要すると解するのが相当だと説示した。
■参考:特別支給の老齢厚生年金決定取消請求事件(平成29年4月21日・最高裁判所第二小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86709