「皮切り」とは、最初に一つすえる灸(きゅう)のことであり、もののはじめの意味である(三省堂国語辞典参照)。新たに何かを始める時は皮切りが肝心で、最初に思い切ってやれば意外に楽に出来るものである。
A氏は某保険会社の優秀な外交員である。転職により初めて営業の仕事に就いた時は毎日が恐怖の連続で、お客様の玄関前で引き返したこともある。そんなある日、お客様の家の門に入って庭を横切ろうとしたところ、満開に咲いたアジサイを見て、「立派な花が咲いたなあ」と思わず声を上げてしまった。偶々、庭にいたお客様がその声を耳にしてA氏に関心を抱いてくれた。更にA氏を家の中に入れ、大事に育てているアジサイ作りの苦労話をした後、保険の話をじっくり聞いて加入してくれた。
A氏はこれを皮切りに営業のやりがいを感じられるようになった(A氏は、営業の皮切りは素直な気持ちでお客様に近づき、お客様の話をじっくり伺うことが大切と言う)。同様に、早く止める方が良いと決めたことが中々止められない場合も皮切りが大切である。例えば、朝の始業時間になっても社員同士が雑談しているような職場でも、上に立つ者が躊躇せずに禁じてしまえば何の支障もないものである。悪い習慣を断ち切る決め手も素早い皮切りの行動だ。