Aの共同相続人である抗告人と相手方との間におけるAの遺産の分割申し立て事件で最高裁大法廷は、預貯金は相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得し、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないなどとした上で、Aの有した不動産を抗告人が取得すべきとした原決定を破棄、大阪高裁に差し戻した。
抗告人はAの養子、相手方はAと養子縁組をしたB(14年に死亡)の子。BはAから約5,500万円の生前贈与を受けていて、相手方の特別受益に当たる。この事件では共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権が、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることの是非が争点となった。
最高裁は、預貯金一般の性格等を踏まえた上で対象となった各種預貯金債権の内容と性質を検討。それらに鑑みると、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当だと説示。併せて、平成15年(受)第670号、同16年4月20日第三小法廷判決、裁判集民事214号13頁、その他、今回示した見解と異なる最高裁の判例は、いずれも変更すべきだとした。
■参考:最高裁判所|遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件・平成28年12月19日・最高裁判所大法廷|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354