Weeklyコラム 一つのことに打ち込む

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世の中全般、近年ますます文化・経済・技術・生活様式等の変化が驚くほど早い。一体、何を基準に選択・行動したら得策なのか迷う。やむを得ず人生の途上で失業や転職をしたり、業種転換したりすることもある。しかし、一般に職業や事業分野の選択については、事前に熟慮して決めたことは安易に変更しない方が旨く行くようだ。

13世紀に道元の弟子懐奘が編集した『正法眼蔵随聞記』に、「人は、世間の人も、衆事を兼学して何れも能(よく)もせざらんよりは、只一事を能して、人前にしても、しつべきほどに学すべき也」(多くの事を同時に学んで、そのどれも、よくはできないよりも、ただ一つの事に練達して、人前に出ても恥かしくないほどに学ぶべきである)とある(山崎正一全訳注、講談社学術文庫)。

知人のA氏は、50年以上植木職人をしている。バブル期には、同業者が次々に景気の良い開発地域の造園や花木販売等多角化したが、A氏は息子達と個人住宅や公園の植木手入れをしてきた。固定客の紹介によって業績は順調で、植木の知識や技能が認められて、A氏と息子達は一流の植木職人として有名になった。職能でも、学問でも、芸術等でも、その道で熟練者を目指す人は、一つのことに長く打ち込む心掛けが絶対条件であろう。