仕事や日常生活の心得として山本常朝口述『葉隠』を参照しているが、準備の重要性を次の言葉によって認識している。「翌日の事は、前晩より案じ、書きつけ置かれ候。これも諸人より先にはかるべき心得なり」(和辻哲郎・古川哲史校訂、岩波文庫)
筆者は研修講師を数多くしているが、一番留意していることは、予行演習(改めて勉強しなおすこと)を欠かさず、予想される質問を想定してノートや資料を用意する。ノートや資料を持って研修会に臨むが、実は研修中ノートや資料をほとんど見ない。では、予行演習が無意味かと言えば、全く違う。準備を充分にする心掛けが精神に落着きを与え、たとえ研修会が本筋から脱線しても元に戻ることが早く、時間オーバーがない。どんな質問が出ても慌てず、場合によっては関係資料を渡すことも出来る。準備の重要性はあらゆる仕事に通じるものである。
例えば、農家であれば翌日以降の仕事を考えて、種苗や農具を用意したり、畑の草刈り等をしたりしておかなければならない。起床してから、さて今日は何をしようかと考えるのは「隠居仕事」である。なお、効率の良い準備として、実施の結果を記録することである。実施の記録を付けることによって、意思が容易に決定し、自信のある行動が出来る。