昔から重い病気は少し治った時(小康状態)が危ないと言われる。人は長期療養等をして病気が回復傾向になると緊張が緩む為か、療養を怠けたりしてより重い病状になることがある。回復期こそ油断出来ない。
経営にも同じ注意が必要で、特に赤字続きや資金繰り難等厳しい経営状況を抜け出す直前が最も要注意だ。一例として、A社長が経営するX社(建設業、年間売上高15憶円)は10年前から業績が低迷して資金繰りに苦しんでいた。毎月の支払期毎に資金調達に走り回り、少しずつ業績が回復していた。そんな時、A社長個人が20年前に買って放置していた山林の一部に公的施設ができることになって売却した。A社長は一息ついて、毎月の資金繰りに苦しまなくなった。今は長年走り続けた休憩時間という言訳をしていた(結果は回復目標期限の先延ばしになった)。人は苦しい環境には中々慣れないが、楽な環境には容易に慣れるものだ。数年後X社が苦境に陥った時、再生の目途が全く立たなくなっていた。
経営改善計画に沿って徐々に業績が回復しているような場合でも、最後の1年か2年の仕上げで力を抜くとたちまち元の木阿弥になることがある。たとえ順調な回復途上にあっても油断せず、目標達成を先延ばしにする態度を戒める心得が大切である。