職務上知り得た企業合併の公表前に妻名義で行った当該企業の株式購入が金融商品取引法違反(インサイダー取引規制)に当たるとして、第1審に続き第2審でも犯罪とされた被告人が控訴した事案で最高裁第一小法廷は上告を棄却した。
同事案では(1)情報源を公にしないことを前提とした報道機関に対する重要事実の伝達と金融商品取引法施行令(改正前)30条1項1号にいう「公開」の関係(2)情報源が公にされることなく会社の意思決定に関する重要事実を内容とする報道がされた場合における金融商品取引法(改正前)166条1項による規制の効力の有無―が争点となった。
最高裁は(1)について、情報源を公にしないことを前提とした報道機関に対する重要事実の伝達は、たとえその主体が同号に該当する者であったとしても、同号にいう重要事実の報道機関に対する「公開」には当たらないと解すべきである、(2)についても、会社の意思決定に関する重要事実を内容とする報道がされたとしても、情報源が公にされない限り、166条1項によるインサイダー取引規制の効力が失われることはないと解すべき―との判断を改めて示し、以上と同旨の理由により本件犯罪事実を認定した第1審判決を是認した原判断は正当だと判決した。
■参考:最高裁判所|金融商品取引法違反被告事件(平成28年11月28日・最高裁判所第一小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86283