扶養控除の書類添付の失念 納税者責任として更正認める

平成30年改正により、国外居住親族を扶養控除の対象とするには、親族ごとに送金関係書類の添付が義務付けられた。本件裁決事例では、請求人が国外居住の母および義母を扶養控除の対象として申告したが、所得税法施行令第262条《確定申告書に関する書類等の提出又は提示》第3項第2号に規定する書類(送金関係書類)を添付等しなければならないところ、当該送金関係書類を添付していなかったため、原処分庁はこれを認めず更正処分を行った。

請求人は、送金の事実はあったが、税務署職員から改正内容の説明を受けておらず、失念したことに合理性があるとして不服を申し立てた。しかし国税不服審判所は、扶養控除の適用要件が法令で明確に定められ、かつ国税庁ホームページ等で周知されていた以上、申告者自身が改正を認識し必要な書類を提出する責任があると判断。

申告納税制度においては、納税者自身の判断と責任により申告を行うことが原則であり、税務職員が改正内容を説明しなかったことは法的義務を欠くものではなく、処分の違法性を構成しないとした。結果、更正処分は適法とされ、法改正の不知が申告者の責任回避にはならず、国外居住親族の扶養控除には確実な証拠書類の添付が不可欠であることを明示した裁決事例となった。

■参考:国税不服審判所|国外居住親族に係る書類の添付等がなく扶養控除の適用がないとして更正の請求ができる場合に該当しないとした事例(令和6年10月22日・裁決)|

https://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0202020000.html#a137