長時間労働の改善に向けて、政府は「働き方の見直し」に向けた企業への働きかけや、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の徹底等を実施してきた。「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月閣議決定)においては、「働き過ぎ防止のための取組強化」が盛り込まれ、また平成26年11月に施行された「過労死等防止対策推進法」に基づき、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」をまとめるなど、長時間労働対策の強化が図られてきた。
こうした状況の中、厚生労働省労働基準局は、各都道府県労働局が公表した際の内容を集約した、労働基準関係法令違反に係る事案(令和6年1月1日~12月31日分)を公表した。全国の都道府県で発生した約400件の事例が一覧されている。
工事現場等での労働災害に関する違反事例が多い中で、36協定の締結・届け出を行うことなく、違法な時間外労働を行わせたものや、4日以上の休業を要する労働災害について、虚偽の報告書を提出したものなどの事例も散見され、経営サイドの労働環境整備に向けた意識の低さが見受けられる。各都道府県労働局に設置された「働き方改革推進本部」等を通じた、より一層の労働環境改善の働きかけや、企業の自主的な働き方の見直しを期待したい。
■参考:厚生労働省|労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和6年1月1日~令和6年12月31日公表分)|
https://www.mhlw.go.jp/content/001150620.pdf