上告人が、職務上の過失によって海難を発生させたとして門司地方海難審判所から裁決をもって小型船舶操縦士の業務を停止する懲戒を受けたため、被上告人を相手に、裁決の取消しを求めた事案。
裁決は、本件事故が甲船が無灯火の状態で航行したばかりか、動静監視不十分で乙船の前路に進出したことによって発生したものとして、乙船の動静監視を十分に行うべき注意義務があったとして、これを怠った職務上の過失がある、とした。
原審は、上記事実関係等の下において、本件裁決の取消請求を棄却した。
最高裁判所は、原審は、乙船の速力、航跡及び甲船との衝突地点について本件裁決と異なる事実認定をしているにもかかわらず、これらの事実を具体的に認定説示していない。つまり上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、本件事故につき上告人に職務上の過失があるものということはできない。したがって、上記行為をもって、本件事故に係る海難につき上告人に職務上の過失があるとした原審の判断には、職務上の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法がある、として、職務上の過失によって発生したものか否か審理を尽くすよう差し戻した。
■参考:最高裁判所|甲船と乙船が衝突した事故に係る海難につき甲船の船長に職務上の過失があるとした原審の判断に違法があるとされた事例(令和6年1月30日・第三小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92682