Weeklyコラム 副業の限界と工夫

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井原西鶴の『日本永代蔵』に、こんな話がある。九助という百姓が拾った大豆一粒を蒔いたところ、一合の豆が実り、それを毎年繰り返したら88石になった。その後も田畑を買って半分に稲を植え、半分に綿を植えて(半田耕作法)、効率良く働いた。

さらに、「千石通し」という農具等を考案して大金持ちになった(堀切実訳注『日本永代蔵』角川ソフィア文庫等参照)。現在、コロナ禍の影響により、飲食店が持ち帰り商品を開拓したり、販売店がドライブスルー方式や宅配に力を入れたりしている。

また、勤め人に副業を認める企業が増えている。たとえ本業の収入が生活費に足りなくても、副業の収入によって補うものである。しかし、勤め人の副業には大きな制約がいくつかある。例えば、一般に副業収入は本業に比べて低く本業の代替にはならない事、副業を認める企業は本業を優先する条件を付ける事、通常本業の人脈や情報を活用した副業は禁じられる事、等である。

そこで、勤め人の副業はともかく、事業者は本業を補うだけの副業的業務ではなく、本業と並列するような「複業」(複数の事業システム)は大きな発展可能性がある。前掲の九助が成功したのは、田畑に稲と綿を半々に植えて生産と流通を戦略的に構築し、効率的な事業を実行したからであろう。