作家内田百聞の随筆に、「尸位素餐(しいそさん)」という言葉が出ていた。「なんにも仕事がない、お役に立たない、それで戴く物だけはいただく」という意味だそうだ(中公文庫の『一病息災』に所収)。
X社(運送業)のA会長と人手不足について検討していたら、次のような話を聞いた。「事業を継いだ昭和50年代、契約していた主力荷主会社の仕事が半減した。相手の社長から、余った人員とトラックは引受けるから、うちの雑用をしばらくしないかと言われた。同じ収入がある事は助かるが、扶養されているようで恥かしかった」、と。仕事が確保出来ない事は、深刻な事態だ。
従来、仕事の確保は、(1)関係先を回る又は飛び込み訪問する(2)人脈により、顧客紹介を頼む(3)グループ会社や下請等を活用して、継続取引を行う(4)折込・電話等による広告、等であった。近年は、インターネット等電子媒体を活用して、仕事も人手も確保する傾向が強まっている。効果があるものの、偏れば事業活動の柱が足りない気もする。社員の中に人脈や営業ノウハウが蓄積しない不安である。
電子媒体で確保が難しくなった場合、何を頼りに打開するのか。今も従来型の受注活動を行っている企業が多いのは、「企業は人なり」の気持ちが強いのであろう。