統合失調症で精神科の医師である上告人の診療を受けていた患者が中国の実家に帰省中に自殺したことについて、患者の相続人である被上告人らが、上告人には患者の自殺防止のために必要な措置を講ずべき義務を怠った過失があるなどと主張して、上告人に対し債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を求める事案で最高裁第三小法廷は、原判決中、上告人敗訴部分を破棄するとともに、同部分につき被上告人らの控訴を棄却した。
原審は、上告人には自殺防止のために必要な措置を講ずべき義務があり、それを怠った過失があるとして不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容した。
最高裁は、上告人が抗精神病薬の服薬量の減量を治療方針として患者の診療を継続し、これにより患者の病状が悪化する可能性があることを認識していたことを考慮したとしても、被上告人からの電子メールの内容を認識したことをもって自殺を具体的に予見できたとはいえず、上告人に自殺防止のために必要な措置を講ずべき義務があったとはいえないと説示。▽上告人は不法行為に基づく損害賠償責任も、債務不履行に基づく損害賠償責任も負わない▽被上告人らの請求はいずれも理由がなく、これを棄却した第一審判決は是認できる―とした。
■参考:最高裁判所|損害賠償請求事件(平成31年3月12日・第三小法廷・判決結果/破棄自判)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88510