Weeklyコラム 調子の良い時ほど用心
荒地を行く際は転ばなかった者が平地で転んだり、収入が少ない時には平穏に生活していた者が偶々大金を得てやがて破綻したりする。健康等も元気な時ほど用心を要する。有名な古典等にもある。「養生の道は、病なき時つつしむにあり。病発(おこ)りて後、薬を用ひ、鍼灸を以て病をせむるは養生の末なり。本をつとむべし」(貝原益軒著『養生訓・和俗童子訓』石川謙校訂、岩波文庫)。さて、一年中資金繰り等に難渋している会社がある。何年もずっと悪いわけではなく、時々は良い時期もある。その良い時期の行動に問題がある。
例えば、X社(自動車整備業)はいつも資金繰りに困っているが、時々収支が好転したり借入に成功したりした場合は一息入れている。資金運用に計画性が無く、安易に従業員を増やしたり新規設備を導入したりしてしまう。経営指導者が資金繰りを警告するが、その時は気を抜いている為か、厳しい資金管理が実行出来ない。因みに、前掲『養生訓』に依れば、調子良い時の対応法を一字で表せば、「畏」(おそるる)にあると言う。「畏」とは、身を守る心掛けで、欲や行いを慎んで過ちのないことを強く求める心である。企業であれば、調子の良い時ほど用心して改善計画や経費節減策等を実行することである。