抗告人が、相手方に対する元金と支払い済みまでの遅延損害金の支払いを内容とする金銭債権を表示した債務名義による強制執行として差し押さえ命令の申し立てをした抗告審で、最高裁第三小法廷は原決定を破棄、原々決定を取り消し、本件を東京地裁に差し戻した。
原々決定、原決定ともに申し立てを却下した。既発の差し押さえ命令に基づく取り立てに係る金員が、申立書に請求債権として記載されていなかった申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当されるか否かが争点。執行裁判所となった東京地裁は、第三債務者の荒川区が遅延損害金の額を計算する負担を負うことのないように、申立書には遅延損害金につき、申立日までの確定金額を記載させる取り扱いをした。その解釈をめぐり争っている。債権は、区から支払いを受ける介護給付費等。原決定は、抗告人が取り扱いに従って申立書に請求債権の各確定金額を記載した以上、申立日の翌日以降の遅延損害金は充当の対象とはならないとした。
最高裁は、取り扱いに従って差し押さえ命令の申し立てをした債権者が、第三債務者から金員の支払いを受けた場合、金員が支払い済みまでの遅延損害金に充当されることについて合理的期待を有しており、申立日の翌日以降の遅延損害金も充当の対象となると説示した。
■参考:最高裁判所|債権差押命令申立て却下決定に対する許可抗告事件(平成29年10月10日・最高裁判所第三小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87129