最高裁第三小法廷は、会社が定めた賃金規則をめぐる訴訟で、従業員側が起こした未払い賃金等の支払い請求を一部認容した原審の上告人敗訴部分を破棄、同部分を東京高等に差し戻した。
上告人に雇用され、タクシー乗務員として勤務していた被上告人らが、歩合給の計算にあたり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等の金額を控除する旨の賃金規則は無効であり、上告人は控除された残業手当等相当額の賃金支払い義務を負うと主張、上告人に対し未払い賃金等の支払いを求めた事案。原審は同定めについて、労働基準法37条の規制を潜脱、同条の趣旨に反し、ひいては公序良俗に反するとして無効だとした。
最高裁は▽割増賃金を支払ったか否かを判断するには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と37条の定める割増賃金に当たる部分とに判別できるか否かを検討し、割増賃金として支払われた金額が通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として37条等に定められた方法で算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきだ▽当該定めが当然に37条の趣旨に反し公序良俗にも反し、 無効とはいえない―とし、原審の判断には割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果、審理を尽くさなかった違法があると断じた。
■参考:最高裁判所|賃金請求事件・平成29年2月28日・第三小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86544