抗告人が、いずれも1筆である各土地について、その各一部分の所有権を時効により取得したと主張して、本件各土地の所有権の登記名義人である相手方らに対し、当該各一部分についての所有権移転登記請求権を被保全権利として本件各土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立て等をした事案。
原審は、本件債権者は、当該一部分についての処分禁止の仮処分命令を得た場合、債務者に代位して分筆の登記の申請を行い、これにより分筆の登記がされた当該一部分について処分禁止の登記がされることによって、当該登記請求権を保全することができるから、当該登記請求権を被保全権利とする当該土地の全部についての処分禁止の仮処分命令は、保全の必要性があるとはいえないとして、本件申立てをいずれも却下すべきものとした。
最高裁判所は、上記土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、上記分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部についてのものであることをもって直ちに保全の必要性を欠くものではないと解するのが相当として、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した。
■参考:最高裁判所|1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者において、当該土地の全部についての処分禁止の仮処分命令は直ちに保全の必要性を欠くものではない(令和5年10月6日・第三小法廷)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92411