上告人が理事長だったAに対し、上告人に対する借入金債務を免除した。税務署長が、その経済的利益が賞与に当たるとして源泉所得税の納税告知処分および不納付加算税の賦課決定処分をした。上告人が各処分の取り消しを求める事案で最高裁第三小法廷は上告を棄却した。
巨額の借入金を抱えるAは平成17年、B社から債務免除を受け納税申告。税務署長から所得税の更正処分等を受け、異議申し立てをした。署長が旧所得税基本通達の「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難と認められる場合」に当たると判断、課税対象外となった。Aは19年、上告人からも債務免除を受けた。上告人は▽今回も課税対象とならないと考え、Aとその旨確認の上で行った▽処分の対象になるなら、前提条件に錯誤があったことになる▽要素の錯誤だから、債務免除は無効―と主張。
原審は、法定納期限の経過後に錯誤無効の主張をすることは許されないとし、処分の一部を適法とした。最高裁はこの点につき、法定納期限が経過したという一事をもって、納付義務を成立させる支払いの原因となる行為の錯誤無効を主張し、その適否を争うことが許されないとはいえないと説示、上告人は経済的成果が錯誤無効に基因して失われた旨の主張をしていないとも指摘した。
■参考:最高裁判所|納税告知処分等取消請求事件・平成30年9月25日・第三小法廷・棄却
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87998