医療法人(被上告人)に雇用されていた医師(上告人)が被上告人に対し、上告人の解雇は無効だとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めるとともに、時間外労働と深夜労働に対する割増賃金とこれに係る付加金の支払い等を求める事案で最高裁第二小法廷は、割増賃金と付加金に関する請求をいずれも棄却すべきだとした原判決を破棄、この部分につき本件を東京高裁に差し戻した。
契約で本給・諸手当・賞与込みの年俸が定められ、時間外勤務給与規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金も年俸に含まれることが合意された。原審は、時間外規程に基づき実際に支払われたもの以外の割増賃金は、月額給与と当直手当に含めて支払われたとした。
最高裁は、使用者が割増賃金を支払ったか否かを判断するには、基本給等の定めにつき通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できることが必要だが、本件合意では割増賃金として支払われた金額を確定すらできず、年俸について通常の労働時間の賃金と割増賃金とを判別できない、ゆえに被上告人の上告人に対する年俸の支払いにより、上告人の時間外労働と深夜労働に対する割増賃金が支払われたとはいえないと説示した。
■参考:最高裁判所|地位確認等請求事件・平成29年7月7日・最高裁判所第二小法廷|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86897