本件は、靖国神社が第二次世界大戦で戦没した軍人及び軍属の氏名等の情報の提供を受け、それらの者を合祀しているなかで、大韓民国の国籍を有する上告人らが、被上告人に対し、了承も得ずに靖國神社に上告人らの各父親の情報を提供した行為は違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払等を求めた事案。
所論は、本件情報提供行為は、靖國神社による前記各父親の合祀のために必要なものであり、上告人らの信仰生活の静謐や遺族としての自己決定権など、不法行為法上の保護を受けるべき権利ないし法的利益を侵害する違法なものであると主張。
最高裁判所は、本件各合祀は昭和34年10月17日までにされている一方、本件訴えの提起は平成25年10月22日にされている。本件情報提供行為の違法性を判断するまでもなく、上告人らの損害賠償請求権については、平成29年法律第44号による改正前の民法724条後段の除斥期間が経過していることが明らかであり、被上告人の主張をすることが、信義則に反し又は権利濫用と判断するに足りる事情があるとはうかがわれないとして、原審の結論は是認。
よって、裁判官三浦守の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、上告を棄却した。※裁判官尾島明の補足意見あり。
■参考:最高裁判所|国が了承を得ずに、靖國神社に各父親の情報を提供した行為について、国家賠償請求が棄却された事例(令和7年1月17日・第二小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93704