本件は、宗教法人である被上告人世界平和統一家庭連合の信者であった亡Aが被上告人に献金をしたことについて、上告人(亡Aの長女)が、被上告人らに対し、上記献金は被上告人の信者らの違法な勧誘によりされたも等を主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求めた事案。
亡Aは度重なる親族の不幸な出来事に会い、三女の紹介により家庭連合の教理を学ぶようになった。悪霊からの脱却のために献金の必要を説かれ、亡Aは5年に亘り合計1億0058万円を献金し、自己所有の土地を売却し、その売得金のうち約2550万円を献金した。いずれも被上告人信者の勧誘を受けて行われた。また被上告人は亡Aが献金について将来返金を求めることを恐れ、今後損害賠償請求等を一切行わない旨の文案を作成し、公証役場にて「念書」の認証を受けた。被上告人は、その際亡Aが肯定する様子のビデオ撮影も行った。
原審は献金を亡Aの自由意志の範囲内とし、資産の状況から過大性も認められないとして違法性を棄却した。最高裁は、原審は各事情の有無やその程度を踏まえつつ、これらを総合的に考慮した上で本件勧誘行為が社会通念上相当な範囲を逸脱するといえるかについて検討するという判断枠組みを採っていないとして、原判決を違法とし差し戻した。
■参考:最高裁判所|宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法とはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例(令和6年7月11日・第一小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93196