中小機構の宮川理事長とJPBMの高田代表理事がトップ対談を行いました

中小企業の経営を支援することを大命題とする両機関のトップが、中小企業を取り巻く経営環境の変化、中小企業が抱える経営課題などを踏まえつつ、今後の取組み等について対談を行いました。(2024.9.25)

高田代表理事

我々JPBMは1986年に設立し、今は国家資格を有する10士業の専門家が会員で、中小企業の経営を支援するために活動しています。会員の先にある中小企業の方々をいかに支援していくか、これは中小機構と共通する課題です。日本の中小企業の成長・発展を期待して、本日はお話を伺いたいと思います。
まず、宮川理事長は今の景況感をどのように見ていますか。

(宮川理事長)

宮川理事長

日本経済は、政策としては消費と賃金を引き上げて好循環を生もうとしていますが、最近はお米や野菜等の価格まで高騰するなど物価高が静まらないため、小売業などのBtoCビジネスは大変な状況です。エネルギーを多く使用する業種なども厳しいですが、建設業や製造業などは堅調に業績が上向いていますので、業種によって状況が違いますが、全体的には、景気回復の入口に入ったかどうかという段階で、今後は徐々に良くなっていくと見ています。
米国が雇用とインフレの問題を抱えており、大統領選も行われますので、米国経済の不透明感が増しています。日本の中小企業に影響が出る可能性もありますので、今後米国経済がどうなっていくのかも注視する必要があると思っています。

高田代表理事

確かに最近は猛暑の影響もあって生鮮食品の価格の高騰を実感します。
政策上は消費喚起のためにも賃上げが必要としていますが、中小企業は人手不足の中で良い人材を確保するために無理に賃上げしている面もあります。しかし、売上や利益が伸びずに賃上げをしている企業は、今後は体力が持たなくなる懸念もあります。中小企業も生産性を向上させることが必須で、そのためにはDXの推進は有効です。また、中小企業はコストの上昇を価格に十分に転嫁できていません。中小企業と取引のある大手企業が価格転嫁に十分に応じていないケースも見受けられます。

宮川理事長

価格転嫁のためには、中小企業側が原価管理などを行って交渉材料をしっかりと持つことも重要です。そこができていない中小企業が少なくありませんので、士業など専門家が積極的に支援すべきだと思います。
我々も、中小企業大学校で、交渉のテクニックや必要な材料について研修を組んで提供しています。

(高田代表理事)

高田代表理事

おっしゃるとおり、中小企業は「勘」の経営をしているところがまだまだ多いですね。取引先や金融機関に交渉や説明をするためにもデータが必要になります。我々JPBMでは、中小企業が経営管理を行うためのツールを開発して安価に提供しようと取り組んでいるところです。
さきほども申し上げましたが、日本は人口減少が止まらず、人手不足を課題に挙げる中小企業が多い。生産性を向上させるしかありませんが、そのためにどうすればよいのか、あるいは、事業承継の課題も続いているため更に支援が必要だと思いますが、宮川理事長はどのようにお考えでしょうか。

宮川理事長

人手不足対策は、人手が足りなければ社員の多能工化を図って能力が高い社員は給料を上げるとか、ワークライフバランスを考慮した働き方を導入するなど、様々な対策が必要で、これは正に経営革新だと思っています。
中小機構はこのような中小企業の課題解決にも役立つ支援を提供できるようノウハウを蓄積してきました。ハンズオン支援、いわゆる伴走型支援を中心に支援していますが、中小企業大学校の研修や、事業承継支援等の事業でも支援していきます。
事業承継は、事業承継税制の適用期限が近づいてきたこともあって支援件数が伸びていますし、中小企業の経営者年齢を表すグラフでは山が一時よりなだらかになってきました。これまで親族への承継を考えていた経営者がM&Aの可能性を考えるケースも増え、事業承継・引継支援センターへの相談件数が親族内承継よりM&Aのほうが上回っています。支援に関与する税理士、公認会計士、弁護士などの数も増えて、動きが活発になってきています。
中小企業が売上を伸ばすためには販路拡大も重要です。中小機構はJ-GoodTechというサイトで大手企業や海外企業と国内中小企業のマッチングを支援していますが、海外企業の登録は約8,000社です。海外企業に販路を拡げている中小企業は総じて業績が良好です。中小企業のご相談に初期段階から入って支援していきます。インバウンドも増加していて、外国の方が帰国した後も日本のものを買いたいという需要が増えています。加工食品などは非常に良いチャンスですので、ネット販売を充実させる企業も増えています。

高田代表理事

円安もあって、海外の需要を取り込んでいる中小企業は業績が好調ですね。
中小機構は専門家約3,000人と共に中小企業を支援していますが、我々JPBMも、中小企業を取り巻く環境変化を敏感に把握し、勉強して、会員同士がそれぞれの得意分野を理解しながら、相互に紹介し合って支援することが今後ますます求められると考えています。中小機構の得意分野もぜひ活用させていただいて、支援の幅を広げたいと思います。

宮川理事長

中小機構もいろんな分野で支援をしていますので、ぜひ連携をお願いしたいと思います。
中小企業の課題は一つではありませんので、中小機構もそれぞれの部署が事業を展開していますが、縦割りにならないよう、それぞれの中小企業の課題に応じて次々と支援のカードを出せるように取り組んでいます。それが中小機構の強みになると思いますし、外部と連携することも重要だと思っています。

高田代表理事

中小企業政策は、成長の可能性がある中小企業やスタートアップ企業の支援を重点化する方向のように思いますし、中小機構の第5期中期計画にも、地域を牽引する企業や成長する企業への支援が重点項目の一つとして盛り込まれましたね。

宮川理事長

時代が変わってきていますので、経営革新をしないと企業は生き残っていけません。課題を克服してチャレンジする中小企業、地域の経済や雇用を支える中小企業の支援は重要だと考えています。
中小機構も、中小企業大学校9校のうち2校を移転して都市部での研修実施に切り替え、オンライン研修も増やしました。女性の応募が増えるなどの効用もあって順調です。ただ、オンラインやリモートでは難しいこともありますので、集合研修とオンライン研修のそれぞれのメリットを踏まえて研修を企画し、提供していきます。
中小機構が運営している共済制度は、小規模企業のニーズ等を実感できる事業でもありますし、加入者も増えています。近々、新システムを導入して情報管理や加入者の利便性を更に充実させることとしているのですが、新システムが稼働すれば、生産性向上を図りながら、サービスは更に向上するように運営していきます。

高田代表理事

宮川理事長は、長く経済産業省で日本経済や産業のあり方に関する視点を培われ、今年の3月まで9年間ほどは民間企業の役員もされて経営者の視点もお持ちでです。中小機構の事業を推進するうえで様々な角度から広い視野で経営ができると思いますから、中小機構の理事長として望ましいキャリアですね。大いに期待しています。
我々JPBMも、中小機構と情報交換させていただきながら、中小企業の方々にとって有益な活動につなげていきたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いします。
本日はどうもありがとうございました。