Weeklyコラム 相手に利益を譲る


「あそこは強い立場を利用して不利な取引を押し付ける」元請と下請、大型店と小規模卸、大規模会社と小規模会社等、多種多様な取引形態によって発言力に差がある。要は、その取引条件に納得して気持ち良く遂行する気になれるか否かが問題である。発言力の差によって取引が不公平になるかもしれないが、長期的な商売の盛衰は公平になるように出来ていると考える。

筆者が好きな話に、二宮尊徳(金次郎)の湯船の湯の譬え話がある。「湯船の湯の如(ごと)し、是(これ)を手にて己(おのれ)が方に掻(か)けば、湯我が方に来るが如くなれども、皆向ふの方へ流れ歸(かへ)るなり、是を向ふの方へ押す時は、湯向ふの方へ行くが如くなれども、又我方へ流れ歸る、少し押せば少く歸り、強く押せば強く歸る、是天理なり」(『二宮翁夜話』福住正兄筆記・佐々井信太郎校訂、岩波文庫)、と。

商売は一般に、取引相手から商品サービスを有利に購入したり、自己の商品価値の高さを主張したりして、より多くの利益獲得が目的である。しかし、相手も同様に商品サービスの有用性と対価を比較したりして取引をしている。相手から利益を奪っている者だけが一方的に繁盛を続けることはなく、むしろ相手に利益を譲る者の方が長く繁盛を続けることになる。