Weeklyコラム 二者択一の迷い

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平成初めの話である。筆者が助言をしていたX建設が経営多角化として、「カラオケ店チェーン」と「コンビニチェーン」のどちらに参入すべきかで非常に迷っていた。当時両業種とも成長期にあり、将来の展望は明るい業種イメージだった。

そこで、両者のどちらに進出すべきか、市場調査を数回した。どちらの業種も店舗数と売上高が伸びており、好立地の場所さえ見つければ展開が易しいように思われた。担当者が売上・利益等の有望性を強調したが、マイナス面はほとんど話題にならなかった。X社の周辺に次々にカラオケ店等が進出し、地価上昇とともに家賃の相場が急上昇した。X社のA社長はどちらにするか迷ったが決断出来ず、筆者に助言を求めてきた。筆者は、「今は、どちらに進出しても一定水準の売上と利益獲得が期待出来るでしょう。しかし、社長は本業を運営する暇が無い程に忙しくなるでしょうね」と答えた。結局、斬新な住宅開発を目指していたA社長は、多角化を中止し、従来のビジョンに従って建設業に専念することにした。後日、「あの時、自分は多業種を運営出来る人ではない」と気づいたとA社長は話していた。現在もX社の会長をしているが、筆者がお会いする度に、「あの時は重大な決断をした」と思い出を語る。