Weeklyコラム 旅の楽しみと利益

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三木清著『人生論ノート』(新潮文庫)に、「旅について」と題して、次の言葉がある。「平生見慣れたものも旅においては目新しく感じられるのがつねである。旅の利益は単に見たことのない物を初めて見ることにあるのではなく、むしろ平素自明のもの、既知のもののように考えていたものに驚異を感じ、新たに見直すところにある」

旅の楽しみは人により様々であろうが、筆者は出張等の合間にその土地の陶器店・金物店・曲げ物店(セイロ等)・食器店等を訪ねる。商品の品揃え、形や材質、用途・デザイン等が地方によって区々であるところがおもしろい。初めて見る商品も珍しくない。例えば、風変わりな形に惹かれて買って来たハサミが実は動物の毛刈り専用であったり、玄関の置物になると思って買って来たものが実は華道で使う剣山(けんざん;生け花で太い針を逆さまに植え付けた道具)であることが判明して驚いたりした。

商店街の店主達と一緒に旅行(視察)をすると、参加者が「この店舗の品揃えは独自性があり魅力的だ。自店の品揃えを見直そう」「あの店舗の従業員は客の興味を予想しながら接客している。もっと客の好みを探ろう」等と感想を言う。旅先で店舗を見学すると、素直に自店の欠点や自己の経営姿勢の間違いに気づいたりするものだ。